【説得の心理技術】読んでみた感想とダイレクト出版について

コミュニケーション

人気の洗脳系ユーチューバーが紹介したことで、一躍話題になったダイレクト出版の名著「説得の心理技術」。

営業・販売を仕事にしている僕としては、「洗脳」なんて言われると興味深々です。

「ちょっとあやしいけど、読んでみたい…。」

目的はもちろん他人を操作すること。

他人を操れれば売り上げもあがるし、おカネも稼げる。

なんなら女の子にもモテるかも?

そんな期待をしながらさっそく購入してみました。

表紙には大きく「悪用厳禁」の文字。

アヤシげです。

ちょっと悪いことに手を染めるようなワクワク感。

そんな不純な動機で「説得の心理技術」を読んでみた感想をレビューします。

実際に活用できるポイントも解説しますので、ぜひご活用ください。

『説得の心理技術』ダイレクト出版と著者について

説得の心理技術

真っ裸になった私を一文なしの状態でアメリカのどこかの町に放り出してみてほしい。私はその日のうちに衣服、食料、宿泊場所、収入を得る手段、支えてくれる仲間、再起するために必要な現金を入手しているだろう。一体なぜか?私は他者を説得し、私の望みどおりに動くことが双方のためになり、双方の目的を達成するために必要なことだと納得させる方法を知っているからだ。

著者のデイヴ・ラクハニ氏は、7歳から16歳までカルト教団で過ごすというインパクトのある経歴をお持ちです。

なかなかアヤシいですよね。

一般的な説得術とはひと味違う感がワクワクを増幅させます。

出版社の「ダイレクト出版」もなかなか個性的。

普通の本屋さんには置いていない、洋書を翻訳したものをおもに扱っています。

世間的にほとんど知られていない本ばかりで、常識とは違った視点で学びを得られるんですね。

アメリカのビジネス本の最新刊がいち早く翻訳されるので、一歩先の情報をつかむことができます。

海外の流行が少し遅れて日本で流行るって聞いたことないですか?

とくにビジネス系の情報はネットだと翻訳されていないものも多く、厳選された最新情報が日本語で得られるメリットはとても大きいですよね。

また、ダイレクト出版のほとんどの本に90日間返金保証がついています。

内容が気に入らなければ期間内であれば全額返金で対応。

しかも、そのときに本を返さなくてもOK。

つまり、本が実質無料になるんですよ。

「説得」と「洗脳」の違いは?

本書では「説得」と「洗脳(あるいは操作)」は似て非なるもの、としています。

  • 「説得」はお互いが合意の上、それぞれにWin-Winの関係になるもの
  • 「洗脳(操作)」は操作者が他者を支配しようとするもの

つまり、目的のちがい。

建設的な目的で使えば「説得」、悪用すれば「洗脳」。

そう、「説得」も「洗脳」もやり方は同じ

使う人の意思で「説得」にも「操作・洗脳」にもなるということです。

本の表紙には大きく『悪用厳禁』と書かれています。

著者いわく、人をあざむく操作などせずにお互いが利益を生む説得を心がけましょう、というこですね。

しかし、そもそもはカルト教団仕込みの説得術。

裏をかえせば、本書の内容でカルト教団への勧誘くらいはできるようになる、と言えるんじゃないでしょうか。

『説得の心理技術』の具体的な方法は?

説得の心理技術でめざすゴール

では、さっそく具体的なテクニックをみていきましょう。

でも、その前にめざす目的(ゴール)を明確にします。

ゴールを言語化したのがこちら。

相手に自分の思い通りの行動をさせる

「説得」「洗脳」らしいゴールですよね。

本書では海外のことわざが引用されています。

ロバの喉が渇いていなければ、水を飲ませることはできない

ロバを水辺につれていくことはできるが、喉が渇いてなければ水を飲ませることはできない。

言い換えれば

「本人が望まなければ、こちらの思い通りの行動をとらせることは出来ない」

たとえば、これをセールスのシーンに置きかえると、

「いくら商品の説明をしても、相手が欲しいと思わないと買ってくれない」

また、恋愛のシーンにおいては、

「いくら自分をアピールしても、好きになってくれない」

よくあるシーンですよね。

ここから説得技術をつかって相手に

「自分にはこの商品が必要なんだ!」

「わたしにはこの人が合っている!」

と思わせる(気づかせる)。

すると、相手が自分の意志で商品を購入してくれたり、好きになってくれたりします。

まさに「相手に自分の思い通りの行動をさせる」です。

相手は自分の意志で決断した行動なので、納得感もあり満足しています。

もちろんこちらも思い通りの結果を得られたので満足です。

これが、この説得術のゴールです。

ワクワクしますよね?

それでは、いよいよ具体的な方法をみていきましょう。

説得の心理技術の具体的な方法

最初にお伝えしますが、説得術は詐欺でも魔法でもありません。

あやしげな呪文や魔術も使いません。

それなりの手間ひまがかかります。

また、かならず誰にでも有効というわけでもありません。

その点だけはご留意ください。

それでは、具体的な説得の方法を解説していきましょう。

本書ではかなり細かく条件や方法が書かれていますが、本記事ではそのなかでも誰でもかんたんにすぐ使える部分だけを紹介します。

説得・操作をしやすくする4つの条件

まず、本書では説得・操作しやすくする4つの条件があげられています。

  • 解決策の提案
  • 時間感覚
  • 損失の可能性
  • 善意の説得者との出会い

「今日中に決めないといけない!」

「この機会をのがすと、きっと損をする!」

このような状況だと、誰でも冷静に判断できなくなり、説得・洗脳されやすくなります。

また、自分ではどうしようもないことの解決策を提案されると、深く考えずについその案にのりたくなりませんか?

こういったシーンを作り出すことで説得・操作がしやすくなります。

ここまでは、わりとわかりやすいですよね。

このようなシーン以外でも常に説得・操作がしやすくなる強力な条件があります。

「善意の説得者との出会い」

相手が自分のことを信用している状態のことです。

見た目をととのえる

相手に信用してもらうことはかんたんではありませんが、必要なポイントがあります。

それが、「見た目をととのえる」。

わかりやすく言うと、パッと見のいい人は信用されやすい

なんだかんだ言っても、人は見た目。

しかも、そのほとんどを決めるのが第一印象。

あなたもそんな経験、ありませんか?

この心理を説得に利用します。

相手を説得するには、まずこちらの話を聞いてもらわないと始まりません。

相手の注意を自分に向けてもらうには、「注目してもらうにふさわしい自分」でいる必要があります。

「この人の言う話なら聞いてもいいかな。」

そう思ってもらえればOK。

相手に自分の存在を意識させることができて、はじめてこちらから発する「言葉」が相手に届きます。

さらに、良い身なりをしていると「できる人」感を印象付けできます。

やっぱり「できる人」の言葉って説得力ありますよね。

具体的にすることはいたってシンプル。

  • 髪型
  • 服装
  • 口臭や体臭、香水などのにおい
  • 爪やヒゲ

これらに気をつけて、清潔感があり、安心感をあたえる身なりを意識しましょう。

身につけるものは質感やデザインのよいものを使うと「できる人」感が演出できてより効果的になりますよ。

説得の方程式

本書では説得の方程式として、3つのステップが紹介されています。

  • 相手の信用を得ている
  • 相手が説得するのに適している
  • ストーリーを語る

説得に適した相手というのは、かんたんにいうと商談相手だったりつき合いたいと思っている異性だったりのこと。

まったく無関係の人を説得しても、思い通りの結果を得ることはできませんからね。

ここでは「ストーリーを語る」について解説していきます。

ストーリーを語る

実はこの章を執筆中に、こんなことがあったんです。

この記事を書いているのは自宅のマンションの一室で、窓から冬の風景が見えます。

重い色をした雲から雪が舞っており、この地域ではめずらしく、うっすらと白く地面をおおっていまいた。

通学のためにバスを待つ高校生たちが雪合戦でもしているようで、「きゃっきゃ!」と盛り上がっている声が。

「久しぶりに雪が積もったから、楽しいだろうなぁ。」

などと思っていると、彼らの声が急に静かに。

「もう飽きたのかな?」

そう思ってふと窓の外をみると、黒いダウンジャケットをきた年配のサラリーマン風の男性が、彼らに何か話しかけています。

身振り手振りでなにやら熱弁をふるうダウンジャケットの男性。

「さわぎすぎて怒られている?」

……ここまで読んでいただいて、冬のバス停のシーンが頭にうかんだでしょうか?

冬の暗い雲、雪景色、高校生、ダウンジャケットの男性…。

ちょっとでも頭にうかんだのであれば、大成功。

もともと人は、言葉をつかってイメージを共有することで進化してきた生き物。

イメージを共有させるには、ストーリー(物語り)で語るのが一番伝わりやすいのです。

ストーリーを聞くと自分で頭の中で映像化しているので、印象が強化されて記憶が長期間のこりやすくもなります。

さらに、たとえ話をすれば威力激増。

わかりにくい説明でも

「たとえば○○に置きかえると…」

と言われたとたん、理解できたって経験はないですか?

マンガやアニメでたとえられるとさらにわかりやすくなりますよね。

「ドラゴンボールでいうと…」

「ドラえもんだったら、こんなとき…」

みたいな感じ。

宗教の勧誘や詐欺、悪徳商法なども巧みにストーリーをつかっていることが多いです。

あらかじめストーリーを練っておく必要はありますが、使えば20倍界王拳くらい効果的ですよ。

さらに説得力を高める方法

ここまでざっくりと説得する手順をおさらいすると、

  1. 見た目をととのえる
  2. 相手に信用される
  3. ストーリーを語る

だいたいこんな流れです。

セールス、初対面、道端でナンパなど、この手順でだいたいポジションがとれます。(注:かならず成功するわけではありません)

こちらに、さらに説得力を上げる方法が次の3つ。

  • 親近感を持たせる
  • 好奇心をあおる
  • 共感を得る

人は感情の生き物。

この3つの感情を相手にもたせると、相手の行動をよりコントロールしやすくなります。

ここではそのうちの一つ、親近感について解説します。

親近感をもたせる

あなたは職場の同僚や学校の友人と、たまたま道ですれ違った初対面の人、どちらが話しやすいですか?

ほとんどの場合、前者ですよね。

なぜか?

それは共通の話題があるから。

デビッドボウイやサッカーのイニエスタ選手などは、あこがれたり尊敬したりできますが、存在があまりにも遠いですよね。

でも、彼らが笑顔で日本の地下鉄に乗ってつり革を持っている写真が公開されたら、一気に親近感がわきませんか?

「地下鉄でつり革をにぎるって、自分と一緒!」

共通の話題ができました。(この場合はこちらの一方的な親近感ですが…)

共通の話題、共感するものがあれば心の距離感はぐっと近くなります。

親近感を持たせるかんたんな質問

初対面の人でも、早い段階で共通の話題を見つけるための質問をします。

慣れるまでは、定番のお天気の話題。

「今日は、いいお天気ですねぇ。」

「まだまだ寒いですねぇ。」

天気の話題はこたえやすいですが、そこから発展しにくいので慣れてきたら別の話題を用意しましょう。

出身地、出身校、趣味、子供の年齢、仕事の愚痴、など。

とにかく共通の話題をすばやく見つけて共感し、親近感をもたせます。

親近感を持たせることができれば、あなたの話しにもより注意深く関心をよせてもらえます。

決断をうながす

説得のゴールは相手に自分の思い通りの行動をさせるでしたね。

説得の最終段階では、相手に行動をうながす必要があります。

クロージングですね。

ここでは、クロージングの方法を解説します。

相手に許可を与える

相手はもうあなたから商品を買おうかどうしようかと、決断をせまられているところまできています。

もう一押しで、商談成立!

ここでの相手の心理は

「この商品を買うという決断は、本当に正しいのだろうか?」

「今、購入の決断をしてしまっていいのだろうか?」

そんなときに、あなたは何と言いますか?

「それでは、どうしましょう?」

と言ってしまうと、相手はどう思うでしょう?

「やめとこかな。。」

「また今度にしようかな。。」

購入しない、あるいは決断しないという決断を下す可能性が出てきます。

それは判断の主導権を相手に握らせるということです。

相手は、「どうすべきか」の判断、指示を待っているんです。

ここで必要なのは

「お客さまは正しい判断を下しましたよ」と安心させ

「大丈夫です。これでいきましょう!」と背中をおしてあげることです。

自分の決断の責任を、あなたにちょっとかぶってほしいんですね。

その「決断」をしてもいいよ、という許可をあたえるのです。

クロージングについて、よりくわしく知りたい方は、こちらの記事【肯定暗示法】クロージングをしっかり掛けないと、売れませんも参考にしてみてください。

『説得の心理技術』問題点

非常に内容の濃い本書ですが、実は「ここはどうなの?」という点がいくつかあります。

読みにくい・・・

本書は洋書を翻訳したもの。

洋書系の本を読まれた方は分かると思いますが、独特の言いまわしがあります。

まわりくどい表現や、まどろっこしい言いまわしなど…。

欧米の人が話をするときって、そんなイメージないですか?

本書も、キッチリまどろっこしい書き方になっています。

慣れてくれば問題ないのですが、それまではすこし読みにくいかも、です。

難易度の高い提案がある

相手を説得するために、あなたにエキスパート(専門家)になることを勧めています。

エキスパートになること自体はよくわかりますが、その方法のなかに

  • 本を執筆する
  • オーディオブックを作る
  • ラジオ番組の司会をする

なんてのがあります。

結構難易度が高くないですか?

ブログぐらいならまだわかりますが、ラジオ番組の司会って…。

いまでこそYouTubeやVoicy、Kindleなどで発信出来ますが、本書の第1版が2013年5月なので、当時ならかなり思い切った提案ですよね。

自分に権威性をつけたりブランディングできたりすると、たしかに説得がしやすくなります。

自身のメディアで発信できるくらいの専門性を身につけましょう!という意味だと思っておきましょう。

説得の心理技術の感想

本書を読んでみた感想ですが、なによりも「カリギュラ効果」が絶大です。

カリギュラ効果

やっちゃダメ!と言われたことはやってみたくなる心理効果

【閲覧禁止】【悪用厳禁】などといわれると、つい見たくなったり悪いことに使ってみたくなったりすること

冒頭でも書きましたが、そもそもこの本を手に取った動機は「もうけたい」「モテたい」などの不純なもの。

著者は「悪用しないでね」と書かれていますが、言われれば言われるほど悪いことにつかってみたくなりますよね。

あと、実際に本書のテクニックをためしたところ、説得・洗脳できているかどうかはわかりませんが、気持ちの上で優位に立っている感覚があります。

今まではセールスの場面でも、なんとなく「ふわっ」とした気持ちで応対していました。

しかし本書を読むと、方向性がさだまり、ほとんどの場面で精神的に優位なポジションがとれます。

女の子と話すときも同様。

やはり、知っているのと知らないのとでは大きな差がありますね。

まとめ

まだまだ細かいテクニックが満載の本書。

マニアックな内容で最初はちょっととっつきにくい印象もありますが、人の心理についてとてもくわしく書かれており、かなり読みごたえもあります。

「相手に自分の思い通りの行動をさせる」

言語化するとあやしい響きがあります。

しかしその方法は、相手の信用を得て、相手にわかりやすく語りかけるという、きわめて正攻法なものです。

営業のお仕事の方はもちろん、コミュニケーションに苦手意識のある方にはかなりおすすめの一冊です。

ただし、くれぐれも「悪用厳禁」で。

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